飲食店の売上分析|ABC分析・RFM分析の手順とPOSデータの使い方
売上が伸び悩んだとき、勘だけで対策を打つと空振りしがちです。POSや予約システムにたまったデータを使えば、どこに伸びしろがあるかを数字で見つけられます。本ページでは、飲食店が見るべき指標と、ABC分析・RFM分析といった手法の具体的な手順、業態別に見るべき指標までを実務の視点で整理します。
売上分析でわかること
売上分析の目的は、数字を眺めることではなく、次の打ち手を決めることです。売上を要素に分解すれば、客数が足りないのか、客単価が低いのか、原価がかかりすぎているのかが見えてきます。原因が分かれば、メニュー・販促・仕入れ・人員配置のどこを直すべきかを判断できます。
飲食店が見るべき指標
| 指標 | 見るポイント | 計算・見方 |
|---|---|---|
| 客数・客単価 | 売上を「客数 × 客単価」に分解し、どちらが伸び悩んでいるかを切り分ける | 日次・曜日別・時間帯別で見る |
| 原価率(F) | 食材費の比率。メニュー別に見て、利益の薄い人気商品がないかを確認する | 食材費 ÷ 売上 |
| 人件費率(L) | 時間帯別の売上と人員を比べ、過不足が出ていないかを見る | 人件費 ÷ 売上 |
| FL比率 | 原価と人件費の合計比率。経営の健全性を測る基本指標 | (食材費+人件費)÷ 売上 × 100(%) |
| 座席回転率 | 1席あたり1日に何回転したか。席をどれだけ活かせたかを見る | 客数 ÷ 座席数 |
| 時間帯・曜日別売上 | 忙しい時間と暇な時間を把握し、仕入れ・シフト・販促に生かす | POSの時間帯別データ |
| チャネル別・決済別 | 店内・テイクアウト・デリバリー別、現金・キャッシュレス別の構成を見る | POSのチャネル/決済区分 |
| メニュー別の数量・粗利 | どの商品が売上と利益を支えているかを把握する | ABC分析で分類 |
| 値引き・廃棄 | 見えにくい利益の漏れ。値引き額と廃棄量を把握して抑える | POSの値引き記録・廃棄記録 |
FL比率などの利益構造は業態によって平均が異なります。自店の数字を比べる目安として、業態別ビジネスモデル図鑑 の業界平均値もあわせて確認すると判断しやすくなります。
ABC分析のやり方(4ステップ)
ABC分析は、メニューを貢献度で分けて優先順位をつける手法です。手順は次のとおりです。
- メニューを売上順に並べる — 一定期間(例えば1か月)の各メニューの売上を集計し、大きい順に並べます。
- 累積構成比を出す — 上から順に売上の累積割合を計算します。全体に対して各メニューが何%を積み上げるかを見ます。
- A・B・Cに分ける — 累積で約70%までをA、90%までをB、残りをCとするのが一般的な目安です。業態や目的により80/15/5などに調整してかまいません。Aが主力、Cが見直し候補です。
- 打ち手を決める — ランクごとに打ち手を変えます。さらに、売上だけでなく粗利や販売数でも同じ分析をすると、売れているのに利益の薄い商品が見えてきます。
サンプル(説明用の例。構成比は売上全体に対する割合。実数は自店のPOSデータで集計します)
| メニュー | 売上構成比 | 累積構成比 | ランク |
|---|---|---|---|
| 看板ラーメン | 40% | 40% | A |
| 人気つけ麺 | 20% | 60% | A |
| 限定そば | 12% | 72% | B |
| サイドメニュー各種 | 18% | 90% | B |
| 低稼働メニュー数品 | 10% | 100% | C |
ランク別の打ち手
| ランク | 打ち手 |
|---|---|
| A(主力) | 欠品させない・品質を守る。価格や見せ方で客単価を伸ばす余地も見る |
| B(育てる) | おすすめやセットで露出を増やし、Aに育てられないか試す |
| C(見直し) | 改良・値付け変更・終売を検討。仕込みや在庫の負担も判断材料にする |
POSからは「メニュー別の売上・販売数・粗利」を期間指定で書き出すと、表計算でも集計できます。売上だけでなく粗利でも分けると、売れていても利益の薄い商品が見つかります。
RFM分析で顧客を分ける
RFM分析は、顧客を3つの軸で分け、誰に何を働きかけるかを決める手法です。離れかけた常連や優良客が見えてきます。
| 軸 | 見ること |
|---|---|
| Recency(最終来店) | 最後にいつ来たか。離れかけの常連を見つける |
| Frequency(来店頻度) | どのくらいの頻度で来るか。優良客を見極める |
| Monetary(利用金額) | いくら使うか。単価の高い層を把握する |
分けた顧客への働きかけは、LINE公式アカウント の配信と組み合わせると実行しやすくなります。たとえば最終来店から時間が経った層に、再来店のクーポンを送る、といった出し分けができます。
代表的な分析手法
| 手法 | 使いどころ | ポイント |
|---|---|---|
| ABC分析 | メニュー構成の見直し・看板商品の強化 | 売上や粗利の貢献度で主力と整理候補を分ける |
| RFM分析 | リピーター施策・LINE配信の出し分け | 顧客を来店頻度や金額で分け、優良客と離反客を把握 |
| 損益分岐点 | 値付け・固定費の判断 | 「いくら売れば赤字にならないか」を把握する |
| 売上予測 | 食材ロス削減・人員配置 | 曜日・天候・イベントから先の売上を見込む |
売上分析の進め方(4ステップ)
- 目的を1つ決める — 「原価を下げたい」「暇な時間を埋めたい」など、改善したいことを1つに絞ります。
- データを集める — POSや予約システムから、客数・客単価・メニュー別売上など必要なデータを取り出します。
- 分解して原因を探す — 売上を客数と客単価に分けるなど、数字を分解して、どこに伸びしろがあるかを見ます。
- 打ち手を試して測る — メニュー変更や販促を試し、変える前と後を同じ指標で比べて効果を確かめます。
業態別に見るべき指標
| 業態 | 重点的に見る指標 | 理由 |
|---|---|---|
| 居酒屋 | 客単価・ドリンク比率・宴会の予約数 | ドリンクの構成比が利益を左右する |
| ラーメン | 回転率・ピーク時間の客数・トッピング付加率 | 回転と追加注文が利益の鍵 |
| カフェ | 滞在時間あたりの売上・時間帯別客数・物販比率 | 滞在の長さと席の回し方が課題になりやすい |
| 焼肉 | 客単価・コース比率・原価率の高い部位の構成 | 原価の高い部位の構成が粗利を左右する |
| ケーキ・洋菓子 | 商品別の廃棄率・予約比率・ギフト構成 | 日持ちと廃棄の管理が利益に直結する |
よくある失敗と対策
| 失敗 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 指標を集めただけで終わる | 目的を決めずに分析を始める | 改善したいことを1つ決めてから数字を見る |
| 売上だけ見て利益を見落とす | 原価率・粗利を見ていない | メニュー別の粗利でもABC分析する |
| 平均で見て実態を見逃す | 全体平均だけ見る | 曜日・時間帯・客層に分けて見る |
| 分析が続かない | 手作業で集計に時間がかかる | POS・予約のデータ連携で集計を自動化する |
ツールと補助金
売上分析は表計算でも始められますが、POSや予約システムのデータを使うと続けやすくなります。これらの導入費用は、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)などの対象になる場合があります。採択された場合の補助率や対象経費は年度ごとに変わるため、最新の要件は 飲食店の補助金一覧 で確認してください。データ活用全体の進め方は DXの進め方、デリバリーの分析は デリバリーの運用改善 でも扱っています。
よくある質問
- 飲食店の売上分析では何を見ればよいですか。
- まず売上を「客数 × 客単価」に分解し、どちらに伸びしろがあるかを切り分けます。あわせて原価率と人件費率、その合計であるFL比率、時間帯・曜日別の売上、メニュー別の数量と粗利を見ると、利益や人員配置の改善点が見えてきます。一度に多くの指標を追わず、改善したい目的に合わせて絞るのがコツです。
- ABC分析とRFM分析はどう使い分けますか。
- ABC分析はメニューを売上や粗利の貢献度でA・B・Cに分け、主力商品と整理候補を見極めるのに使います。RFM分析は顧客を最終来店・来店頻度・利用金額で分け、リピーター施策や配信の出し分けに使います。メニュー構成を見直すならABC分析、再来店を増やすならRFM分析、と目的で選びます。
- ABC分析はどうやって行いますか。
- 一定期間の各メニューの売上を大きい順に並べ、上から累積構成比を計算します。累積で約70%までをA、90%までをB、残りをCに分け、Aは強化、Cは整理や改良を検討します。売上だけでなく粗利でも同じ分析をすると、売れているのに利益の薄い商品が見つかります。
- 分析には専用のツールが必要ですか。
- 小規模なら表計算ソフトでも始められますが、POSや予約システムのデータを使うと手間が減り、続けやすくなります。データが複数のシステムに散らばっていると集計が大変になるため、連携できる仕組みを選ぶと分析が回りやすくなります。導入費用は補助金の対象になる場合があります。
- デリバリーの売上も同じように分析できますか。
- デリバリーは手数料の分だけ手元に残る利益が変わるため、店内の売上とは分けて見るのが基本です。注文数や客単価に加え、手数料を引いた後の手元利益で判断します。詳しくはデリバリーの運用改善のガイドで解説しています。
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