飲食店の電気開通
物件を決めたあとで「電気の容量が足りない」と分かるのが、開業準備でいちばん厄介なつまずき方です。厨房機器が動かず、増設工事の費用と工期が後から乗ってきます。
このページでは、契約の仕組みと、当サイトが36業態について持っている必要容量の目安、そして物件を決める前に何を確認すればよいかを整理します。
飲食店は、電気を2つ契約することが多い
店舗の電気は、用途で契約が分かれます。照明やコンセントに使う電灯と、大型エアコンや業務用厨房機器に使う動力です。飲食店では、この両方を契約するのが一般的です。
東京電力エナジーパートナーの動力プランは、公式サイトでこう案内されています。
商店や飲食店などで大型エアコンなどの動力の機器や設備を使用されるお客さま向けのプランです。標準電圧200V(三相3線式)で電気をお届けします。
| 区分 | 何に使うか | 電圧 | 基本料金の決まり方 |
|---|---|---|---|
| 電灯 | 照明・コンセント・小型機器 | 単相100V / 200V | アンペアまたはkVAに応じて決まる |
| 動力 | 大型エアコン・業務用冷蔵庫・製氷機など、モーターを使う機器 | 三相200V | kW(契約電力)に応じて決まる |
東京電力エナジーパートナーの法人向け料金プラン(関東エリア向け表示・2026-08-19 確認)では、基本料金の単価がこう示されています。
- スタンダードS(電灯): 10Aにつき311円75銭
- スタンダードL(電灯): 1kVAにつき311円75銭
- 動力プラン: 1kWにつき1,098円05銭
単価も単位も違うため、電灯だけを見て「基本料金はこれくらい」と見積もると足りません。
物件を見るときに確認するのは、動力が引き込まれているかどうかです。事務所や物販の跡地には動力が来ていないことがあり、その場合は引き込みから工事になります。
業態によって、必要な量は下限どうしで5.6倍ちがう
当サイトが36業態について置いている月間使用量の目安を並べました。
いちばん少ないタピオカ・ドリンク専門店が900-1,600 kWh、いちばん多い焼肉が5,000-7,000 kWhです。
よく知られた8業態を抜き出しました。全36業態は下の表で見られます。
赤は、設備容量の目安が50kVAを超える業態です(36業態のうちお好み焼き屋・ステーキ屋・牛丼屋・焼肉の4業態)。
高圧になるかどうかは契約電力(kW)で決まるため、容量が大きくなりやすいことを示す目安で、高圧が確定するという意味ではありません。
これは業態ごとに当サイトが置いている想定値で、実測した平均ではありません。席数・営業時間・空調の使い方で大きく変わります。
契約区分も業態で変わります。タピオカ・ドリンク専門店は低圧 12-22kVA、焼肉は低圧高負荷 60-80kVA(設備容量が大きく、契約電力によっては高圧契約)です。「飲食店だからこれくらい」という一つの目安は置けません。
全36業態の契約区分と月間使用量を見る
| 業態 | 契約容量の目安 | 月間使用量の目安 |
|---|---|---|
| タピオカ・ドリンク専門店 | 低圧 12-22kVA | 900-1,600 kWh |
| クレープ屋 | 低圧 15-25kVA | 1,000-1,800 kWh |
| バー | 低圧 15-25kVA | 1,200-2,000 kWh |
| 喫茶店 | 低圧 15-25kVA | 1,200-2,000 kWh |
| テイクアウト・弁当 | 低圧 15-25kVA | 1,200-2,000 kWh |
| 焼き鳥屋台 | 低圧 15-30kVA | 1,200-2,400 kWh |
| 立ち飲み・大衆酒場 | 低圧 20-30kVA | 1,400-2,200 kWh |
| カレー屋 | 低圧 20-30kVA | 1,500-2,500 kWh |
| 唐揚げ専門店 | 低圧 15-25kVA | 1,500-2,500 kWh |
| そば屋 | 低圧 20-30kVA | 1,500-2,800 kWh |
| カフェ | 低圧 20-30kVA | 1,800-2,800 kWh |
| 餃子専門店 | 低圧 20-30kVA | 1,800-2,800 kWh |
| 焼き鳥屋 | 低圧 25-40kVA | 1,800-3,000 kWh |
| 牛タン専門店 | 低圧 30-40kVA | 2,000-3,500 kWh |
| ホルモン専門店 | 低圧 30-40kVA | 2,000-3,500 kWh |
| アイスクリーム屋 | 低圧電力等(設備容量30-50kVA相当) | 2,000-3,500 kWh |
| 韓国料理店 | 低圧 30-40kVA | 2,000-3,500 kWh |
| ピザ屋 | 低圧高負荷 30-40kVA (電気窯) / 低圧 20-25kVA (ガス窯) | 2,000-4,500 kWh |
| スイーツ専門店 | 低圧高負荷 25-40kVA | 2,000-3,500 kWh |
| 定食屋 | 低圧高負荷 25-35kVA | 2,000-3,000 kWh |
| うどん店 | 低圧高負荷 25-35kVA | 2,000-3,000 kWh |
| 串カツ屋 | 低圧高負荷 30-50kVA | 2,200-4,000 kWh |
| とんかつ屋 | 低圧高負荷 30-50kVA | 2,200-3,800 kWh |
| ケーキ屋 | 低圧高負荷 30-50kVA | 2,500-4,000 kWh |
| ハンバーガー店 | 低圧高負荷 30-40kVA | 2,500-3,500 kWh |
| イタリアン | 低圧高負荷 30-40kVA | 2,500-3,500 kWh |
| お好み焼き屋 | 低圧高負荷 35-55kVA | 2,500-4,500 kWh |
| パン屋 | 低圧高負荷 30-50kVA (オーブン2-3台稼働時) | 2,500-4,000 kWh |
| ラーメン | 低圧高負荷 30-40kVA | 2,500-3,500 kWh |
| ステーキ屋 | 低圧高負荷 35-55kVA | 2,500-4,500 kWh |
| 寿司 | 低圧高負荷 30-40kVA | 2,500-3,500 kWh |
| フレンチ | 低圧高負荷 35-45kVA | 3,000-4,000 kWh |
| 中華料理 | 低圧高負荷 40-50kVA | 3,500-4,500 kWh |
| 牛丼屋 | 低圧高負荷 35-55kVA (24時間営業時) | 3,500-6,000 kWh |
| 居酒屋 | 低圧高負荷 40-50kVA | 3,500-4,500 kWh |
| 焼肉 | 低圧高負荷 60-80kVA(設備容量が大きく、契約電力によっては高圧契約) | 5,000-7,000 kWh |
kVAとkWは、同じ数字とは限らない
容量の話には、A(アンペア)・kVA・kW・kWh という単位が入り混じります。ここを混ぜると、見積もりを読み違えます。
| 単位 | 何を表すか | どこで出てくるか |
|---|---|---|
| A(アンペア) | 流れる電流の大きさ | 電灯の契約(スタンダードS など) |
| kVA | 設備が受けられる容量。電圧×電流で決まる | ブレーカーや受電設備の容量表示、電灯のkVA契約 |
| kW | 実際に使われる電力。kVAに力率をかけたもの | 動力の契約電力、高圧の50kW基準 |
| kWh | 使った電力の量(kW × 時間) | 毎月の請求、使用量の目安 |
注意したいのはkVAとkWが同じ数字になるとは限らないことです。両者の比を力率と呼び、力率が1なら一致します。
ただしモーターを使う機器では力率が1より小さくなるため、kWはkVAより小さい値になるのが普通です。力率が低いほど、同じ仕事をするのに大きな容量が要ります。
当ページの業態別データで「低圧高負荷 60-80kVA」のようにkVAで示している数字と、高圧の境界である50kWは、単位が違うため直接は比べられません。
どの契約区分になるかは、機器構成をもとに電力会社が判断します。目安として見てください。
必要な容量を、自分で積算する手順
「先に必要量を出す」と書きましたが、やり方を書かないと動けません。手順はこうです。
- 入れる機器をすべて書き出す。冷蔵庫・冷凍庫・製氷機・食洗機・オーブン・フライヤー・エアコン・換気扇・POS・照明まで、抜けなく並べます。
- それぞれの消費電力を調べる。機器の仕様表かカタログに、消費電力(W または kW)と電源の種別(単相100V/単相200V/三相200V)が書かれています。中古を入れる場合は現物の銘板を見てください。
- 電源の種別ごとに合計する。単相のものは電灯側、三相のものは動力側です。ここを分けないと、どちらの契約をいくらにすればよいか出ません。
- 同時に使う分を見る。すべての機器が常時、定格どおりに動き続けるとは限りません。ピーク時に何が同時に動くかを、営業の流れに沿って確認します。ここは業者と相談する部分です。
- 余裕を見る。ぎりぎりで契約するとブレーカーが落ちます。将来の機器追加も含めて、業者と一緒に決めてください。
この積算は、厨房機器の見積もりを依頼する段階で業者に出してもらえます。物件を申し込む前に、この数字を手元に持っておくことが、あとから工事費が乗るのを防ぐいちばん確実な方法です。
契約電力が50kW以上になると高圧になり、キュービクルが要る
契約電力が50kW以上になると、低圧ではなく高圧の契約になります。ここは金額の話だけでは終わりません。
関西電力の解説では、高圧は標準電圧6,000Vで供給され、敷地内に受変電設備(キュービクル)の設置が必要とされています。
キュービクルは箱型の設備で、点検のときには建物内外の電気を遮断する役割も担います。設置スペースと費用、そして運用中の保安管理が発生します。
同じ解説には、高圧の契約期間は「需給契約が成立した日から料金適用開始の日が属する年度の末日まで」が一般的で、契約期間途中の解約は違約金が発生する場合もあるとも書かれています。
当サイトのデータで設備容量の目安が50kVAを超えているのはお好み焼き屋・ステーキ屋・牛丼屋・焼肉です。
無煙ロースターを席ごとに置く、鉄板を客席に置く、24時間営業で空調と冷凍冷蔵を止めない、といった構成で容量が跳ね上がります。ただし前述のとおり、高圧かどうかは契約電力(kW)で判定されます。
契約区分の説明は関西電力の高圧電力の解説ページによります(2026-08-19 確認)。実際にどの区分になるかは、設置する機器の構成と電力会社の判断によります。
物件を決める前に確認すること
容量の問題は、契約したあとでは動かせないことが多くなります。内見のときと、申し込む前に確認しておく項目を挙げます。
- 動力が引き込まれているか。三相200Vが来ていなければ、引き込みからの工事になります。分電盤に三相の表示があるか、メーターが何個ついているかで見当がつきますが、確実なのは管理会社か電力会社への確認です。
- いまの契約種別と容量。前のテナントが何をどれだけ契約していたか。書面で出してもらえるか聞いてください。
- ビル全体で、その区画に回せる上限。テナントビルでは建物全体の受電容量が決まっており、1区画に使える量に天井があります。「自分の区画だけ増やしたい」と言っても、建物側で足りなければ増やせません。
- 増設が必要になったときの費用負担。誰が負担するのかは契約条件によります。物件を申し込む前に、書面で確認しておく項目です。
- 自分が入れる厨房機器の総容量。ここが分からないと、上の4つを確認しても判断できません。機器のリストを作り、それぞれの消費電力を足してください。厨房機器の業者に見積もりを依頼する段階で出してもらえます。
順番が大事です。先に自分の必要量を出し、それを持って物件を見に行く。逆にすると、気に入った物件に合わせて機器を諦めることになります。
居抜きでも、前の業態が違えば足りない
居抜き物件は初期費用を抑えられますが、電気に関しては「前のテナントと同じ業態か」で話が変わります。
上の図で見たとおり、業態によって使用量は下限どうしで5.6倍ひらきます。
タピオカ・ドリンク専門店の跡地に焼肉を入れれば、容量は当然足りません。逆に、同業態の居抜きなら動力も含めてそのまま使える可能性が高くなります。
居抜きの価値は「前に何が入っていたか」で決まります。厨房設備が残っていることだけを見て判断せず、契約種別と容量まで確認してください。
開通までの流れ
- 厨房機器のリストから、必要な容量を出す(物件を探す前)
- 物件の既存契約種別・容量・動力の有無を確認する(申し込む前)
- 物件契約後、電力会社へ申し込む。内装工事中も電気を使うため、工事開始前に手配する
- 契約電力を決める。工事中と営業時で必要量が違う場合、途中で契約を変更することがある
- 必要に応じて配線工事・分電盤の増設を手配する
- 開通工事日を調整する(電力会社の立ち会いが入ることがある)
- 開通の完了を確認して、営業開始
開店の30日前には本契約の段取りを終えておくと、工事の日程調整に余裕が持てます。繁忙期は工事の予約が取りにくくなります。
電気代を左右するのは空調
開業後のコストで意外と見落とされるのが空調です。関西電力の解説には、建物や店舗の電力使用量のうち40〜50%を空調設備が占めるとあります(業種・業態で差はあります)。
厨房機器の消費電力に注意が向きがちですが、月々の請求額を動かしているのは空調であることが多い、ということです。物件の断熱、客席の広さ、営業時間帯が、そのまま毎月の固定費に効いてきます。
電気開通の取次相談
飲食店の電気・ガス開通は、業態と店舗規模に合った契約形態の選定が重要です。電気・ガス開通取次は姉妹サイト「電気ガス窓口ナビ」(株式会社エンクス運営)と連携した受付窓口を設けています。
物件の容量・業態・開業時期に合わせた契約プランをご案内します(取次対応は開通受付のみ。解約・名義変更等は契約先へ直接ご連絡ください)。
このページで使った数字について
- 業態別の契約容量と月間使用量は、当サイトが36業態それぞれについて置いている想定値です。公的統計の実測値ではありません。各業態ページに前提を掲載しています。
- 契約区分と受変電設備の説明は、関西電力の高圧電力の解説によります(2026-08-19 確認)。
- 料金プランの区分と基本料金は、東京電力エナジーパートナーの法人向け料金プランによります(2026-08-19 確認)。地域と電力会社によってプラン名も単価も異なります。
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電気・開業ライフラインの相談
開通の受付に必要な情報の整理、業態に合った契約プランのご案内、申し込みの取次までを承ります。
物件の容量そのものの確認や増設可否の判断は、管理会社・電力会社・電気工事業者へのご確認が必要です。業態別の必要容量・契約区分は業態別ガイドにも記載しています。