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飲食店のガス開通

ガスは電気と違って、種類を自分で選べないことが多い設備です。都市ガスが来ていない場所なら、LPガス(プロパン)で始めることになります。

このページでは、当サイトが36業態について持っている使用量の目安と、LPガスの料金の見方、そして物件を決める前に何を確認すればよいかを整理します。

都市ガスかLPガスかは、物件が決める

都市ガスは地下の導管で供給されるため、導管が通っているエリアでしか使えません

LPガスは容器(ボンベ)を店舗の外に置いて供給するため、導管が来ていない場所でも使えます。ただし容器の置き場所と、配送業者が入れる動線が要ります。

都市ガスLPガス(プロパン)
供給のしかた地下の導管店舗の外に置く容器(ボンベ)
使える場所導管が通っているエリアのみ導管がない場所でも使える
料金の決まり方ガス小売事業者の料金メニュー販売事業者ごとの自由料金
事業者の変更小売の自由化で選べる切り替えは可能だが、設備の所有者が誰かで話が変わる
設置スペース容器の置き場所は不要(メーターと配管は必要)容器の置き場所と配送動線が要る

つまり物件を決めた時点で、ガスの種類はほぼ決まります。「安いほうを選ぶ」という発想ではなく、内見の段階でどちらの供給かを確認し、その前提で計画を立てることになります。

当サイトのデータでは、36業態のうち6業態を「都市ガスまたはLPガス」と記録しています。

オーブンや焼台を主役に使う業態で、火力の確保のためにLPガスを選ぶことがあるためです。

業態によって、使用量は下限どうしで8倍ちがう

当サイトが36業態について置いている月間使用量の目安です。

いちばん少ないバーが50-100 m³、下限がいちばん大きいのはラーメンと焼肉で400-600 m³です。

上限600 m³にはステーキ屋も並びます。

バー 50〜100 カフェ 100〜150 寿司 100〜200 ラーメン 400〜600 居酒屋 250〜350 とんかつ屋 300〜500 中華料理 300〜500 焼肉 400〜600 0 200 400 600 1か月に使うガスの量(m³)
火を長時間つけっぱなしにする業態ほど、桁が変わる

よく知られた8業態を抜き出しました。赤は下限がいちばん大きいラーメンと焼肉です。全36業態は下の表で見られます。


これは業態ごとに当サイトが置いている想定値で、実測した平均ではありません。営業時間・席数・調理法で大きく変わります。

全36業態のガス種別と月間使用量を見る
業態想定するガス種別月間使用量の目安
バー 都市ガス 50-100 m³
アイスクリーム屋 都市ガスまたはLPガス(焼き菓子併売時) 50-150 m³
立ち飲み・大衆酒場 都市ガス 80-150 m³
タピオカ・ドリンク専門店 都市ガスまたはLPガス(茹で釜中心) 80-180 m³
カフェ 都市ガス 100-150 m³
クレープ屋 都市ガスまたはLPガス 100-200 m³
ホルモン専門店 都市ガス 100-220 m³
喫茶店 都市ガス 100-150 m³
パン屋 都市ガス 100-200 m³
ピザ屋 都市ガス 100-400 m³
寿司 都市ガス 100-200 m³
牛タン専門店 都市ガス 120-260 m³
ケーキ屋 都市ガスまたはLPガス(オーブン) 150-300 m³
フレンチ 都市ガス 150-250 m³
韓国料理店 都市ガス 150-300 m³
テイクアウト・弁当 都市ガス 150-250 m³
焼き鳥屋台 都市ガスまたはLPガス(焼台中心) 150-300 m³
カレー屋 都市ガス 200-350 m³
餃子専門店 都市ガス 200-350 m³
イタリアン 都市ガス 200-300 m³
唐揚げ専門店 都市ガス 200-350 m³
お好み焼き屋 都市ガス(鉄板予熱・厨房) 200-400 m³
そば屋 都市ガス 200-500 m³
スイーツ専門店 都市ガスまたはLPガス(オーブン中心) 200-400 m³
牛丼屋 都市ガス(厨房・温蔵設備) 250-450 m³
居酒屋 都市ガス 250-350 m³
定食屋 都市ガス 250-350 m³
串カツ屋 都市ガス(フライヤー大量消費) 280-500 m³
中華料理 都市ガス 300-500 m³
ハンバーガー店 都市ガス 300-500 m³
とんかつ屋 都市ガス(フライヤー大量消費) 300-500 m³
うどん店 都市ガス 300-500 m³
焼き鳥屋 都市ガス(焼台で大量消費) 300-500 m³
ステーキ屋 都市ガス(グリル・鉄板大量消費) 350-600 m³
ラーメン 都市ガス 400-600 m³
焼肉 都市ガス 400-600 m³

1か月の使用量と、同時に出せる火力は別の話

上の表は1か月にどれだけ使うかの目安です。これとは別に、同時にどれだけの火力を出せるかという問題があります。開業前に問題になりやすいのはこちらです。

同時に出せる火力は、ガス機器そのものの能力(号数やkW)と、そこへ供給するメーターの容量と配管の口径で決まります。月間使用量が小さくても、ピーク時に大きな火力を同時に使うなら、供給側が足りなければ動きません。

逆に言えば、厨房機器のリストを作り、それぞれのガス消費量を足したうえで、ピーク時に同時に使う分を確認するという手順は電気と同じです。この数字は、厨房機器の見積もりを依頼する段階で業者に出してもらえます。

建物の外壁沿いに並べて置かれたLPガスの容器
LPガスは容器を店舗の外に置いて供給します。置き場所と、配送車が寄せられる動線が要るため、内見のときに確認しておく項目です。

厨房機器は、ガスの種類が合っていないと使えない

ここが、中古の厨房機器を買うときにいちばん危ないところです。ガス機器は、対応するガスの種類が決まっています。

東京ガスの公式サイトには、こう書かれています。ガス機器には適合するガスの種類が明記されたステッカーが貼られており、使用前に必ず確認する。

東京ガスが届けているのは13Aの都市ガスで、機器が13A用(または12A・13A両用)以外の場合は調整作業が必要になります。

機器調整には、部品の取り寄せなどが必要となるため通常2週間〜1ヶ月程度かかります。(機種によっては、部品がないなどの理由で調整できないこともあります)。

開業準備の日程で考えると、これは重い話です。内装工事が終わってから機器のガス種が違うと分かれば、そこから2週間から1か月。しかも調整できない機種もあります。

中古の厨房機器を探すときは、物件のガス種を先に確定させてからにしてください。「安く手に入ったが使えなかった」は、実際に起きます。新品を発注する場合も、見積もりの段階でガス種を伝えます。

出典は東京ガス「ガス機器とガスの種類」(2026-08-20 確認)。都市ガスの種類は地域の事業者で異なるため、供給を受ける事業者に確認してください。

LPガスの料金は、2024年の法改正で見え方が変わった

LPガスの料金は販売事業者ごとの自由料金です。ここに長く「無償貸与」という商慣行がありました。設備を事業者が負担して入れる代わりに、その費用をガス料金に上乗せして回収する、という形です。

資源エネルギー庁は2024年4月2日に液化石油ガス法の施行規則を改正し、次の規律を設けました。

内容何が変わったか施行日
過大な営業行為の制限 正常な商慣習を超えた利益供与の禁止。事業者の切り替えを制限するような条件付き契約の禁止 2024年7月2日
三部料金制の徹底 基本料金・従量料金・設備料金に分けて示すこと(新規・既存とも義務)。ガス消費と関係のない設備費用をガス料金に計上することの禁止(新規契約が対象。既存契約は早期に移行する努力義務) 2025年4月2日
料金等の情報提供 入居する前に料金情報を提示する努力義務。直接要請があれば応じる義務 2024年7月2日

実効性の裏づけもあります。同じ資料では、次の3つが報告徴収・立入検査、勧告と公表、基準適合命令、登録の取消し、そして30万円以下の罰金の対象として挙げられています。

  • 過大な営業行為の制限
  • 三部料金制
  • 入居予定者から直接要請があった場合の料金情報の提供義務

不動産関係者を通じた事前提示は努力義務なので、ここには含まれません。

開業する側にとって使えるのは、「無償で設備を入れます」と言われたときに、その費用がどの料金に入っているのかを確認できるということです。

三部料金制のもとでは、設備料金は分けて示されます。基本料金と従量料金だけが提示され、設備費用の説明がないなら、内訳を聞いてください。

この改正が主な背景としているのは、賃貸集合住宅で起きていた消費者被害です。ただし対象の「一般消費者等」には、施行令で飲食物の調理のための燃料として業務に使う者が挙げられており、飲食店も原則として含まれます。

どの規律が当たるかは、借主と建物の所有者が同一か異なるか、新規契約か既存契約かで変わります。

判断が必要な場面では契約書と事業者に確認してください。

出典は資源エネルギー庁 資源・燃料部 燃料流通政策室「LPガスの取引適正化に向けた制度改正の内容」(2024年7月・近畿経済産業局 説明会資料/2026-08-20 確認)です。

物件を決める前に確認すること

  1. 都市ガスかLPガスか。これで料金の決まり方も、事業者を選べるかどうかも変わります。まずここを確認します。
  2. メーターの容量と配管の口径。同時に出せる火力の上限を決めます。書面で出してもらえるか聞いてください。
  3. LPガスなら、設備が誰の所有か。販売事業者の所有物であれば、切り替えのときに撤去や精算の話になります。契約前に所有関係を確認しておきます。
  4. LPガスなら、料金表の内訳。基本料金・従量料金・設備料金がどう示されているか。設備料金の欄がないなら、その費用がどこに入っているのかを聞きます。
  5. 自分が入れる厨房機器のガス消費量。ここが分からないと、上の4つを確認しても判断できません。機器のリストを作り、それぞれの消費量を足します。
  6. 容器の置き場所(LPガスの場合)。ボンベを置くスペースと、配送車が入れる動線が要ります。
  7. 手持ちの厨房機器があるなら、そのガス種。ステッカーで対応するガスの種類を確認します。物件のガス種と違えば、調整に2週間から1か月かかります。

電気と同じで、先に自分の必要量を出し、それを持って物件を見に行くのが順序です。

居抜きでも、前の業態が違えば足りない

上の図のとおり、業態によって使用量は下限どうしで8倍ひらきます。

バーの跡地にラーメンや焼肉を入れるなら、そのままでは足りない可能性があります。

厨房設備が残っていることだけを見て判断せず、ガス種別・メーター容量・配管の口径まで確認してください。同業態の居抜きなら、そのまま使える可能性が高くなります。

開通までの流れ

  1. 厨房機器のリストから、必要なガス消費量を出す(物件を探す前)
  2. 物件のガス種別・メーター容量・配管の口径を確認する(申し込む前)
  3. 物件契約後、ガス事業者へ申し込む
  4. 必要に応じて配管工事・メーターの交換を手配する
  5. 開栓の日程を調整する(立ち会いが必要)
  6. ガス機器の接続と点火確認
  7. 開栓の完了を確認して、営業開始

開店の30日前には段取りを終えておくと、工事の日程調整に余裕が持てます。開栓には立ち会いが要るため、内装工事の最終日程と合わせて押さえてください。

ガス開通の取次相談

飲食店のガスは業態によって必要容量が大きく異なります。電気・ガス開通取次は姉妹サイト「電気ガス窓口ナビ」(株式会社エンクス運営)と連携した受付窓口を設けています。

物件のガス種・厨房機器構成・開業時期に合わせた契約プランをご案内します(取次対応は開通受付のみ。解約・名義変更等は契約先へ直接ご連絡ください)。

このページで使った数字について

  • 業態別のガス種別と月間使用量は、当サイトが36業態それぞれについて置いている想定値です。公的統計の実測値ではありません。各業態ページに前提を掲載しています。
  • 液化石油ガス法の省令改正の内容・施行日・罰則は、資源エネルギー庁 資源・燃料部 燃料流通政策室「LPガスの取引適正化に向けた制度改正の内容」(近畿経済産業局が公開している説明会資料・2026-08-20 確認)によります。

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メーター容量や配管の口径そのものの確認、増設可否の判断は、管理会社・ガス事業者・設備業者へのご確認が必要です。業態別の必要容量は業態別ガイドにも記載しています。