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飲食店の営業許可

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店を開けるまでに保健所を通す、というところまでは誰でも知っています。

つまずくのはその先で、自分の店が何の許可を取ることになるのかが、売り方によって変わることを知らないまま物件を決めてしまう場合です。このページでは、根拠になる条文にあたって、そこを整理します。

許可が要る営業は、32に分かれている

食品を扱う営業がすべて同じ手続きになるわけではありません。

食品衛生法 第54条は、都道府県が施設の基準を定めるべき営業を政令に委ねており、その政令が食品衛生法施行令 第35条です。ここに32の業種が並び、飲食店営業はその第1号です。

この32業種に入る営業は、同法 第55条第1項で都道府県知事の許可を受けることになります。

許可の対象にも、政令で定める「公衆衛生に与える影響が少ない営業」にも当たらない食品営業は、第57条第1項の届出の対象になります。許可と届出は別の制度で、届出のほうには施設検査がありません。

1 2 3 4 5 6 7 8 赤 8業種 = 飲食店が関わりやすい 灰 24業種 = 通常は関係しない
許可が要る32業種のうち、飲食店に関わるのは8つ

残る24業種は乳処理業、食肉製品製造業、清涼飲料水製造業など、飲食店の開業では通常出てこない製造業です。

32業種の多くは製造業で、飲食店を開くときに関係してくるのはそのうちのごく一部にすぎません。ただし「一部だから関係ない」と読み飛ばすと、後で困ることになります。

その場で出すか、作って売るかで、要る許可が変わる

同じ料理でも、店内で出すのか、持ち帰らせるのか、作って卸すのかで、あてはまる業種が変わります。ここが最初に押さえる分かれ目になります。

店内で調理して、その場で出す
→ 飲食店営業(第1号)だけで足りる
店で出しているものを持ち帰らせる
→ 飲食店営業の範囲か、そうざい製造業(第25号)か。
  線引きは保健所の判断
パン・菓子・アイスを作って売る
→ 菓子製造業(第11号)
  アイスクリーム類製造業(第12号)
冷凍やレトルトにして通販する
→ 冷凍食品製造業(第27号)
  密封包装食品製造業(第30号)
下へ行くほど、別の許可が関わってくる

括弧内の号数は食品衛生法施行令 第35条のもの。2段目の線引きは自治体の運用によります。持ち帰りを始めるなら、規模と方法を具体的に説明したうえで保健所に確認してください。

施行令の条文は、業種ごとに何を作る営業なのかを定義しています。飲食店が関わりやすいものを抜き出すと、こうなります。

業種条文が定義している範囲
第1号飲食店営業食品を調理し、または設備を設けて客に飲食させる営業(施行令 第34条の2第2号の定義)
第11号菓子製造業菓子(パンとあん類を含む)を製造する営業
第12号アイスクリーム類製造業アイスクリーム、シャーベット、アイスキャンデーなど、液体食品を凍結させた食品を製造する営業
第24号麺類製造業麺類を製造する営業
第25号そうざい製造業煮物・焼物・揚物・蒸し物・酢の物・あえ物、またはこれらと米飯などを組み合わせた食品を製造する営業
第26号複合型そうざい製造業そうざい製造業と併せて、食肉の処理・菓子・水産製品(魚肉練り製品を除く)・麺類の製造をする営業(重要工程管理を行う場合に限る)
第27号冷凍食品製造業そうざいを製造し、その冷凍品を製造する営業
第30号密封包装食品製造業レトルトパウチ・缶詰・瓶詰など、保存に冷凍も冷蔵も要しない密封包装食品を製造する営業

出典: 食品衛生法施行令 第35条(e-Gov 法令検索/2026-08-20 確認)。定義は要約しています。

通販や冷凍販売を考えるなら、第26号を知っておく

店で出すだけでなく、作ったものを売る方向へ広げるとき、許可を何本も取ることになるのかという問題が出ます。ここに複合型そうざい製造業(第26号)という枠があります。2021年6月の制度見直しで設けられたものです。

条文は、そうざい製造業と併せて、食肉の処理、菓子、水産製品(魚肉ハムやソーセージなどの魚肉練り製品は除かれます)、麺類の製造をする営業をこれにあたるとしています。

個別に取るのではなく、ひとつの許可で扱える形になっています。

ただし、ひとつ条件が付いています。条文には「重要工程管理を行う場合に限る」と書かれています。

ここでいう重要工程管理は、食品衛生法 第51条第1項第2号の「食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組」です。

同じ第51条は、小規模な営業者について「その取り扱う食品の特性に応じた取組」でよいとしています。一般的な飲食店が求められているのは、通常こちらの簡易な方です。

複合型を選ぶなら、簡易な方ではなく本来の工程管理が必要になります。冷凍販売や通販を視野に入れるかどうかで、衛生管理の作り込みの深さが変わってきます。

冷凍にして売るなら第27号の冷凍食品製造業、レトルトや瓶詰にするなら第30号の密封包装食品製造業が別に関わります。

設備の要件も違うので、始めてから考えるのでは間に合いません。HACCP対応とあわせて、事業計画の段階で保健所に相談しておくところです。

自分の業態だと、どこで引っかかりやすいか

売り方で決まるとはいえ、業態によって「そういう売り方をしがち」というものがあります。当サイトが扱っている業態のうち、追加の許可が話題になりやすいものを挙げます。

こういう売り方をするなら関わってくる業種該当しやすい業態
店で焼いたパン・菓子を、包装して棚で売る菓子製造業(第11号)パン屋ケーキ屋スイーツ専門店クレープ屋
自家製のアイスをカップに詰めて売るアイスクリーム類製造業(第12号)アイスクリーム屋
自家製麺を、生麺のまま売る・卸す麺類製造業(第24号)ラーメンそば屋
弁当やそうざいを作って売るそうざい製造業(第25号)テイクアウトを主軸にする店
仕入れた肉を、店頭で量り売りする食肉販売業(第3号)焼肉
鮮魚を店頭で売る魚介類販売業(第4号)寿司
スープや惣菜を冷凍して通販する冷凍食品製造業(第27号)冷凍そうざいを通販に出す店

表の右列は「その業態なら必ず要る」という意味ではありません。あくまで、その業態でよく出てくる売り方です。実際に要るかどうかは、何をどれだけ作ってどう売るかで決まります。

なお、食肉販売業と魚介類販売業は、条文で「専ら容器包装に入れられた状態で仕入れ、そのままの状態で販売する営業」を除くとしています。

包装されたものを開けずにそのまま売るだけなら、この許可の対象からは外れます。第57条の届出の側に回るかどうかは保健所で確認してください。

施設基準は、全国で同じではない

食品衛生法 第54条は、こう書いています。都道府県は、政令で定める営業の施設について、「厚生労働省令で定める基準を参酌して、条例で、公衆衛生の見地から必要な基準を定めなければならない」

国が基準を示し、自治体がそれを参酌して条例で定める、という構造になっています。おおもとの考え方は共通していても、実際に検査で当てられるのは開業する場所の条例になります。

ネットで見た他県の情報をそのまま図面に反映すると、検査で指摘されることがあるのはこのためです。

厨房の配置が描かれた店舗の平面図と、スケールと鉛筆
事前相談に持っていくのは、この段階の図面です。工事が始まってからでは、手洗いやシンクの位置を動かすのに費用がかかります。

検査で見られるのは、おおむね次のような点です。これも自治体で細部が違うので、図面段階の事前相談で確認してください。

区分見られる点
客席と厨房の区画壁やカウンターで明確に分かれているか
手洗い設備厨房内とトイレに、手を洗うための専用の設備があるか
シンク食材の洗浄と食器の洗浄を分けられる数と配置になっているか
給湯湯が使えるか
冷蔵・冷凍設備扱う食材の量に足りる容量か。温度を確認できるか
トイレ客席からの動線、手洗いの設置、扉の遮蔽
排水・排気グリストラップ、排気ダクトの経路
食品の保管床に直接置かずに保管できる棚や場所があるか
ステンレスの2槽シンクと、その横に独立して設けられた手洗い設備
検査でよく指摘されるのが、食器を洗うシンクと手を洗う設備が分かれていない、という点です。あとから配管を足すのは費用がかかるので、図面の段階で決めておきます。

申請のときに出す書類

申請書と一緒に出すのは、施設と人の両方を示す書類になります。自治体で様式も名称も違いますが、揃える中身はおおむね共通しています。

書類何を示すためのものか
営業許可申請書営業者と営業所、営む業種
施設の平面図・設備の配置図施設が条例の基準に合っているか。事前相談で見てもらう図面がそのまま使えます
食品衛生責任者の資格を示すもの受講修了証、または調理師免許などの資格証
登記事項証明書法人で申請する場合の法人格
水質検査の成績書水道水以外(井戸水・貯水槽)を使う場合の水の安全性

申請は窓口のほか、厚生労働省の食品衛生申請等システムからオンラインでもできます。ただし施設の検査は実地で行われるので、オンラインで完結するわけではありません。

許可には期限があり、切らすと無許可営業になる

食品衛生法 第55条第3項は、都道府県知事が許可に「五年を下らない有効期間」その他の条件を付けられると定めています。

つまり期間は自治体が決めますが、5年より短くはなりません。実際の年数は許可証に書かれているので、そこで確認してください。

更新を忘れると、許可のないまま営業している状態になります。同法 第82条第1項は、第55条第1項に違反した者を2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金としています(情状により併科)。

開店のときだけ気にして、その後放置してしまうのが落とし穴です。許可証に書かれた期限を、店の年間予定に入れておいてください。

食品衛生責任者は、店ごとに1名

許可を受けるには、施設ごとに食品衛生責任者を置くことになります。取り方は2つあります。

  • 各都道府県の食品衛生協会などが実施する養成講習会を受ける。1日で終わります。自治体によってはeラーニングでも受けられます
  • 調理師、栄養士、製菓衛生師、船舶料理士などの資格を持っているなら、講習は要りません

注意したいのは日程のほうです。講習会は先の回まで埋まっていることがあり、思い立ってすぐ受けられるとは限りません。

開業日が決まっているなら、物件を探し始めた頃に予約を取っておくと安全です。受講料と開催日程は自治体ごとに違うので、開業する都道府県の食品衛生協会で確認してください。

開業日から逆算すると、こうなる

許可の手続きは、内装工事と噛み合っています。工事が終わってから動き始めると、検査と再検査の分だけ開業が後ろにずれます。

  1. 物件を決める前
    保健所に事前相談
    図面を持って行く。施設基準は自治体の条例なので、ここで確認しないと工事のやり直しになる。相談は無料。
  2. 開業3〜4か月前
    食品衛生責任者の資格を取る
    講習会は日程が埋まりやすい。調理師・栄養士・製菓衛生師などを持っていれば受講は要らない。
  3. 内装工事の着工前
    図面の最終確認
    手洗い・シンク・区画は着工後に直すと費用が大きい。事前相談で指摘された点が図面に反映されているか見る。
  4. 工事完了の2週間前ごろ
    営業許可を申請
    申請書、施設の平面図、食品衛生責任者の資格を示すもの、法人なら登記事項証明書など。井戸水を使うなら水質検査の成績書。
  5. 工事完了後
    保健所の施設検査
    担当者が立ち会って設備を見る。指摘があれば直してから再検査になる。
  6. 検査に通ってから
    許可証の交付
    交付を受けてから営業を始める。許可証は店内の見やすい場所に掲示する。
  7. 深夜に酒を出すなら
    公安委員会へ届出
    所轄の警察署が窓口。営業を始める前に提出する。

申請から許可までの日数と手数料は自治体の運用と条例によります。事前相談のときに、自分の場合の目安を聞いておいてください。

深夜0時から先は、届出と許可が分かれる

深夜に酒を出す店は、保健所とは別に警察の手続きがあります。ここで、届出で済むのか許可が要るのかが分かれます。混同されやすいところです。

やること手続き根拠
深夜に酒を出す(主食の提供を常態としない店)届出(公安委員会)風営法 第33条第1項
深夜に、客に遊興をさせながら酒を出す許可(特定遊興飲食店営業)風営法 第2条第11項
接待をする許可(風俗営業)風営法 第2条第1項

深夜の範囲は、風営法 第13条第1項に「午前零時から午前六時までの時間」と書かれています。この時間帯に酒を出すなら、営業所ごとに届出書を出します。窓口になるのは所轄の警察署です。

ただし、届出の対象になる「酒類提供飲食店営業」は同法 第2条で、バーや酒場のように客に酒類を提供して営む営業と定義され、「営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むもの」は除かれています。

食事を主に出す店が、その延長で深夜も酒を出しているなら、届出が要らない場合があります。自分の店がどちらにあたるかは、営業の実態を説明して警察署に確認してください。

さらに、同法 第33条第4項は、都道府県が条例で地域を定めて深夜の酒類提供飲食店営業を禁止できるとしています。営業できる地域かどうかは、開業する自治体の条例で決まります。物件を決める前に確認する項目です。

構造と設備にも基準があります。同法 第32条第1項が、深夜に飲食店営業を営む者に対し、営業所の構造と設備を国家公安委員会規則の技術上の基準に適合させるよう求めています。

その中身は同法施行規則 第99条にあります。こちらは条例ではなく全国共通です。

項目基準
客室の床面積1室あたり9.5平方メートル以上(客室が1室だけなら適用されない)
見通し客室の内部に、見通しを妨げる設備を設けない
出入口客室の出入口に施錠の設備を設けない(営業所の外へ直接通じるものを除く)
照度営業所内の照度が20ルクス以下にならないよう維持する
騒音・振動条例で定める数値を超えないよう維持する

個室を作る、照明を落とす、といった内装の方向性は、この基準と正面からぶつかります。深夜に酒を出す予定があるなら、内装を決める前に確認してください。

出典: 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(e-Gov 法令検索/2026-08-20 確認)。

保健所と警察のほかにも、窓口がある

許認可の話は保健所に集まりがちですが、開業日までに通す窓口はほかにもあります。

窓口内容要るケース
消防署防火対象物使用開始届など市町村の火災予防条例によります。着工前に消防署へ確認してください
消防署防火管理者の選任・届出建物や店舗の規模によります。同じく消防署で確認します
税務署個人事業の開業届、または法人設立届個人・法人のいずれでも
労働基準監督署・ハローワーク労災保険・雇用保険従業員を雇うとき
年金事務所社会保険法人、または条件を満たす個人事業

消防関係は市町村の条例に基づくため、届出の名称も要否も地域で変わります。内装工事の内容によって扱いが変わることもあるので、施工業者まかせにせず、着工前に自分で消防署に確認しておくのが確実です。

居抜きは「営業を譲り受ける」のか「借りて始める」のか

同じ居抜きでも、契約の形で手続きが変わります。ここを取り違えると、要らない申請をするか、必要な届出を落とすかのどちらかになります。

食品衛生法 第56条第1項は、許可を受けた者がその営業を譲渡したとき、譲り受けた者が許可営業者の地位を承継すると定めています。

相続、法人の合併・分割も同じです。この場合は同条第2項により、事実を証する書面を添えて遅滞なく届け出ることになります。新規の許可申請にはあたりません。

一方、前の営業者が廃業した物件を借りて自分の店を始めるなら、営業を譲り受けたことにはなりません。厨房設備が残っていても、それは物件に付いてきただけです。このときは新たに許可を受けることになります。

ケース手続き根拠
営業そのものを譲り受ける地位の承継 → 届出第56条第1項・第2項
相続、法人の合併・分割地位の承継 → 届出第56条第1項・第2項
廃業した物件を借りて始める新規の許可申請第55条第1項

どちらにあたるかは契約の実態で決まります。仲介の説明をそのまま信じず、契約書の内容を保健所に説明して判断してもらってください。

もうひとつ、前の営業者が許可を取った時期の基準と、いまの基準が違うことがあります。2021年6月に制度が見直されているため、それ以前から続いている店の設備が現在の条例に合っているとは限りません。

「前の店が営業できていたから大丈夫」とは考えず、契約する前に図面を持って保健所へ行ってください。

同じ物件でも、入る業態が変われば要る許可が変わります。業態別のページで、自分がやろうとしている売り方を具体的にしてから相談すると、話が早くなります。

物件と設備の相談

当サイトは許認可の代行はしていません。手続きそのものは保健所・警察署・消防署が窓口で、事前相談はいずれも無料です。

開業にあわせた電気・ガスの開通は、当サイトで受付の取次をしています。ライフラインの開通から進めてください。取次の範囲は開通受付までで、解約や名義変更は契約先へ直接お願いします。

このページで使った法令について

条文は 2026-08-20 に e-Gov 法令検索で確認したものです。手続きの運用・手数料・様式は自治体で異なるため、実際の判断は開業する地域の窓口で確認してください。

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