飲食店開業の補助金
開業資金を計算していると、補助金の話が必ず出てきます。ただ、調べ始めると制度の名前が多すぎて、自分がどれに当てはまるのか分からなくなる。しかも記事によって書いてある制度が違います。
理由のひとつは、もう終わった制度がまだ載っていることです。このページは各制度の公式サイトを1件ずつ開いて、いま何が動いているかを確認して書いています。
補助金は、開業資金の前払いには使えない
まず押さえたいのが、お金が入ってくるタイミングです。「補助金が出るから初期投資を減らせる」と考えて計画を組むと、開店前に足りなくなります。
| 制約 | 内容 | 実務への影響 |
|---|---|---|
| 後払い(精算払い) | 経費を先に支払い、実績報告後に補助金が振り込まれる | 開業前の支払い原資には使えない。先に全額を用意する必要がある |
| 申請から入金まで6〜10ヶ月 | 採択後も実績報告・確定検査の手続きが必要 | 開業前から動いても入金は開業後になる |
| 採択率は100%ではない | 制度と公募回によって大きく異なる(公式の採択結果で確認) | 「採択される前提」で資金計画を組まない |
補助金は原則として後払いです。採択されても、支払いは自分で先に済ませる必要があります。
ここが、補助金を開業資金として当てにできない理由です。採択されてから入金までのあいだ、支払いは全部自分の資金で回します。開業直後にいちばん資金が薄くなる時期と、この期間が重なります。
落とし穴はもうひとつあります。多くの制度で、交付決定より前に発注・契約した経費は対象外です。
内装工事の契約を先に済ませてから「補助金が使えるらしい」と気づいても、その工事はもう対象になりません。使うつもりなら、契約より先に制度を調べる順番です。
補助金と助成金は、審査の性質が違う
2つの言葉が並んで使われますが、応募する側から見ると採択の見通しが立つかどうかが違います。
| 補助金 | 助成金 | |
|---|---|---|
| 主な所管 | 経済産業省・中小企業庁・自治体など | 厚生労働省が多い(雇用・労働関係) |
| 採択の考え方 | 予算と件数の枠があり、審査で選ばれる | 要件を満たせば受給できる設計のものが多い |
| 申請のとき出すもの | 事業計画。何をどう良くするかを書く | 要件を満たしていることを示す書類 |
| 飲食店での使いどころ | 販路開拓、設備、システム導入 | 従業員の雇用・研修・処遇改善 |
このページで扱うのは主に補助金のほうです。枠があるので、要件を満たしても採択されないことがあります。「申請すればもらえる」という前提で資金計画を組むと崩れます。
人を雇うなら、雇用系の助成金も並行して調べる価値があります。こちらは要件を満たせるかどうかの話なので、見通しが立てやすい面があります。
ただし名前が「助成金」でも審査があるものはあります。このあと触れる東京都の創業助成事業は、年間の採択予定件数が決まっている審査型です。名称で判断せず、制度ごとに募集要項を見てください。
2026-08-21 時点で確認すべき制度
公募の受付中かどうかは制度ごとに違います。受付前のものも含めて並べました。
金額も締切も公募回ごとに変わります。申請する前に、必ず公式の最新版を見てください。
- 補助上限
- 通常枠 50万円 / 創業枠 200万円
- 補助率
- 2/3
- 主な用途
- チラシ・看板・ウェブサイト・店舗改装などの販路開拓
- 公募の状況
- 一般型 第14〜16回の受付回が進行中
- 補助上限
- 申請枠により異なる
- 補助率
- 申請枠により異なる
- 主な用途
- POSレジ・予約システム・キャッシュレス端末
- 公募の状況
- 2026年の公募が進行中(IT導入支援事業者との共同申請)
- 補助上限
- カタログ注文型・一般型で異なる
- 補助率
- 類型により異なる
- 主な用途
- 配膳ロボット・券売機・自動調理機など
- 公募の状況
- カタログ注文型は第8回公募中(2026年8月18日〜10月中旬予定)
- 補助上限
- 枠・従業員数により異なる
- 補助率
- 枠により異なる
- 主な用途
- 高額な厨房設備・自動化設備
- 公募の状況
- 継続中(23次締切の採択結果を2026年8月7日公表)
- 補助上限
- 従業員1〜5人で750万円(賃上げ特例850万円)〜51人以上で2,500万円(同3,500万円)
- 補助率
- 中小企業者1/2(一定条件で2/3)、小規模事業者等2/3
- 主な用途
- 新業態の開発、既存事業と異なる市場への進出
- 公募の状況
- 第1回公募は2026年9月30日〜10月30日18:00(2026-08-21 時点では受付前)
- 補助上限
- 上限400万円・下限100万円
- 補助率
- 助成対象と認められる経費の2/3以内
- 主な用途
- 賃借料・広告費・器具備品購入費・従業員人件費など
- 公募の状況
- 令和8年度 第2回の申請受付は2026年9月29日〜10月8日(2026-08-21 時点では受付前)
制度名は各公式サイトへのリンクです。出所と確認日はこのページで使った出典にまとめています。
開業する人がまず見るのは、持続化補助金の創業枠
一覧のうち、開業する人にとって現実的なのは小規模事業者持続化補助金の創業枠です。通常枠の補助上限が50万円なのに対し、創業枠は200万円。補助率はどちらも2/3です。
| 類型 | 補助上限 | 補助率 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 50万円 | 2/3 |
| 創業枠 | 200万円 | 2/3 |
| 賃金引上げ枠 | 200万円 | 2/3(赤字事業者は3/4) |
| 卒業枠・後継者支援枠 | 200万円 | 2/3 |
出典: 小規模事業者持続化補助金(一般型)公募要領 第13版(第16回受付締切)/2026-08-21 確認。
インボイス特例の要件を満たすと、上記の補助上限に50万円が上乗せされます。要件と対象経費は公募回ごとに変わるため、公式サイトの最新版で確認してください。
対象になるのは販路開拓の取り組みです。チラシ、看板、ウェブサイト、店舗の改装などが該当します。
一方で厨房機器の単体購入は対象になりにくく、販路開拓との関係を説明できるかどうかが問われます。設備そのものを入れたいなら、後で触れる別の制度を見ることになります。
窓口は商工会議所か商工会で、どちらの管轄かは店舗の所在地で決まります。
申請には窓口が発行する書類が要るので、公募締切の直前に駆け込んでも間に合いません。物件を探し始めた頃に一度相談しておくのが現実的です。
自治体の制度が、国の制度より条件に合うことがある
国の補助金だけを見ていると見落とすのが、都道府県や市区町村の創業支援です。金額でも国の制度に引けを取らないことがあります。
東京都の創業助成事業は、上限400万円・下限100万円、助成率は対象経費の2/3以内です。
対象経費は賃借料・広告費・器具備品購入費・産業財産権の出願導入費・専門家指導費・従業員人件費・市場調査の委託費。賃借料と人件費が入るのが、国の補助金との大きな違いです。
令和8年度は年2回の募集で、第2回の申請受付は2026年9月29日から10月8日。採択予定件数は年間200件です。
助成対象期間は交付決定日から最長2年間。開業直後の運転コストをまたいで支援を受けられる設計です。
出典: 東京都創業NET/東京都 報道発表「令和8年度『創業助成事業』募集」(2026-08-21 確認)。他の道府県・市区町村にも創業支援の制度があります。開業する場所が決まったら、その自治体名で調べてください。
設備を入れるなら、省力化投資補助金のカタログを見る
持続化補助金が販路開拓の制度である以上、厨房機器や店舗設備そのものは対象になりにくくなります。設備側で見ておきたいのが中小企業省力化投資補助金です。
この制度には「カタログ注文型」と「一般型」の2つがあります。
カタログ注文型は、事務局が登録した製品カタログから選んで導入する形です。飲食店では配膳ロボット、券売機、自動調理機などが該当します。製品が事前に登録されているぶん、事業計画をゼロから書く負担は小さくなります。
一般型は、自店の現場に合わせた設備導入やシステム構築を対象にします。自由度は高いかわりに、計画の作り込みが要ります。
カタログ注文型は第8回の公募中で、期間は2026年8月18日から10月中旬(予定)です(2026-08-21 確認)。
対象製品はカタログに載っているものだけ。導入したい機器がカタログにあるかを先に確認するのが早い進め方です。
補助金で埋まるのは、開業資金の一部でしかない
金額を並べると大きく見えますが、開業資金全体に対してどのくらいなのかを見ておきます。当サイトが36業態に置いている初期投資の中央値は1,450万円です。
灰色の帯が初期投資の中央値、赤が各制度の補助上限。上限が満額出る前提の単純計算です。
初期投資は当サイトが36業態に置いている想定値の中央値です(業態別 開業資金ランキング)。
補助上限が満額出る前提の単純計算で、採択・交付決定・対象経費の確定・自己負担分の先払いは考慮していません。実際の交付額は対象経費と補助率で決まります。
いちばん条件のよい東京都の創業助成事業を満額で受けられたとしても、初期投資の27.6%です。持続化補助金の創業枠なら13.8%。補助金は開業資金の柱にはなりません。
それでも意味があるのは、後回しになりがちな支出を実行できるようにするところです。開店告知の広告、看板、ウェブサイトは、資金が苦しいと真っ先に削られます。そこに補助が付くかどうかで、オープン直後の客数は変わります。
柱は公庫の創業融資と自己資金で組む。補助金はその上に乗せるものです。
何に使うかで、見る制度が変わる
制度が多くて迷いますが、お金を何に使うのかで見る先はほぼ決まります。
開業直後は売上の実績がないため、大型の制度は要件を満たしにくくなります。まず販路開拓と、地域の創業支援から見ます。
採択されたあとにも、やることが残る
補助金は入金されて終わりではありません。採択された後の報告義務まで含めて、引き受けるかどうかを判断してください。
持続化補助金なら、補助事業が終わったあと1年間の事業効果を報告する義務があります(実施期間終了日の属する月の翌月から1年間)。賃金引上げ枠・卒業枠で交付を受けたなら、賃上げの状況もあわせて出します。
提出していない事業者は、その後の補助金申請で制限を受けることがあると公募ポータルに書かれています。
大型の制度では、もっと重い条件が付きます。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、補助事業が終わったあと3〜5年の事業計画で次の3つをすべて満たす必要があります。
- 付加価値額の年平均成長率 +4.0%以上
- 1人あたり給与支給総額の年平均成長率 +3.5%以上
- 事業場内最低賃金が、地域別最低賃金より +30円以上高い水準
そして目標に届かなければ、補助金の一部または全額を返す義務が生じることがあると公式サイトに書かれています。
開業したばかりの店が、3〜5年先の成長率を約束できるか。ここを読まずに金額の大きさだけで選ぶと、あとから重い条件を背負うことになります。
出典: 小規模事業者持続化補助金(一般型)公募ポータル、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイト(いずれも 2026-08-21 確認)。要件は公募回ごとに変わります。
名前が残っているが、もう公募していない制度
検索するとまだ多くの記事に載っていますが、次の2つは公募が終わっています。開業計画に組み込まないでください。
| 制度 | 状況 |
|---|---|
| 事業再構築補助金 | 公式サイトに「本補助金の公募は終了しております」と掲示 |
| 中小企業新事業進出補助金 | 公募終了。新規の受付は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」へ |
とくに事業再構築補助金は、コロナ禍の大型補助金として知られたため、いまも「飲食店 補助金」で調べると上位に出てきます。
当サイトも以前このページで現行制度として紹介していました。2026-08-21 に公式サイトを確認したところ公募終了と掲示されていたため、記載を改めています。
中小企業新事業進出補助金も公募を終え、新規の受付は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金に移りました。
名前が似ているうえ、公式サイトにも「これらとは異なる補助金です」と注記があるほど紛らわしい。申請するときは制度名を正確に確認してください。
業態別の補助金活用パターン
ラーメン・テイクアウト専門店(低単価×高回転型)
初期投資を圧縮したい業態です。チラシ・看板・SNS広告費といった販路開拓の費用が、持続化補助金の申請候補になります。ただし採択も交付も保証されません。
オープン告知と時期を合わせたいなら、公募スケジュールから逆算します。POSや券売機を入れるなら、デジタル化・AI導入補助金2026や省力化投資補助金の対象かを導入業者に確認しておきます。
カフェ・喫茶店(客単価中〜高×滞在型)
内装投資が大きい業態です。開業して間もない時期なら、持続化補助金の創業枠(上限200万円)に当たるかをまず確認します。
POS・予約システムの整備はデジタル化・AI導入補助金2026、販促は持続化補助金。使い分ける形になります。
焼肉・寿司(高単価×設備集約型)
無煙ロースターや大型冷蔵設備のような高額機器は、ものづくり補助金の対象になりえます。
ただし革新性が求められるため、標準的な設備をそのまま入れるだけでは通りにくくなります。何が新しいのかを説明できる形にしてから申請することになります。
デリバリー・ゴーストレストラン(低設備コスト型)
内装・設備の投資が少ないぶん、対象になる経費も限られます。デリバリー管理システムはデジタル化・AI導入補助金2026、デジタル広告の運用費は持続化補助金、という組み合わせが考えられます。
既存店からの業態転換に使えた事業再構築補助金は公募が終わりました。代わりに新事業進出・ものづくり商業サービス補助金が要件に合うかを見ることになります。
開業タイミング別の申請スケジュール
| タイミング | 推奨アクション | 理由 |
|---|---|---|
| 開業18ヶ月前 | 認定支援機関(商工会・税理士等)への相談 | 事業計画書の精度が採択率を大きく左右する |
| 開業12ヶ月前 | 都道府県の創業助成金の公募スケジュール確認 | 東京都等は申請受付が1年に1〜2回しかない |
| 開業6ヶ月前 | デジタル化・AI導入補助金の登録ITツール・支援事業者の確認 | IT導入支援事業者が共同申請者になるため事前調整が必要 |
| 開業後3ヶ月以内 | 小規模事業者持続化補助金(一般型・通常枠)の申請 | 事業実態がある状態での申請が審査で有利になりやすい |
| 開業後6〜12ヶ月 | 販促実績をもとに2回目の持続化補助金申請 | 1回目の採択実績が審査評価に影響する場合がある |
申請の前に、ここで落ちていないか確かめる
公募要領を読むと、審査で見られる項目と、対象にならない経費がはっきり書かれています。よくつまずくのは次の3つです。
- 計画が具体的でない。「新しいカフェをオープンします」だけでは通りません。対象商圏、狙う客層、他店との違い、数値の目標。ここを書き切れるかどうかで差が付きます
- 対象外の経費が混ざっている。人件費や消耗品、光熱費が入ると減額や不採択につながります。制度ごとに対象経費が違うので、公募要領の一覧で先に照合します
- 公募期間を逃す。受付は期間内だけで、1日でも過ぎれば次の回まで待つことになります。Jグランツやミラサポplusで公募情報を定期的に見ておきます
どこに相談するか
持続化補助金は、商工会議所か商工会の窓口で相談し、確認書を受け取るのが標準の流れです。申請書の書き方もそこで相談できます。
ものづくり補助金のような大型の制度では、認定経営革新等支援機関(商工会・税理士・中小企業診断士など)の関与を求められることがあります。
いずれも無料の相談窓口があります。独力で書き始める前に、一度持ち込んでみてください。
当サイトでは補助金申請の実務対応は行っていませんが、お問い合わせで提携先の認定支援機関をご紹介できます(送客のみ、手数料なし)。
よくある質問
- 補助金は開業資金の代わりに使えますか?
- 後払い(精算払い)のため、開業前の資金として充てることはできません。融資・自己資金で先に経費を支払い、実績報告後に入金されます。運転資金として補助金を組み込まないことが基本です。
- 採択されたら必ずもらえますか?
- 採択はあくまで「対象事業として認められた」状態で、実際の入金は実績報告・確定検査を通過後です。計画通りに経費を使い、期限内に報告書を提出することが条件です。
- 複数の補助金を同時に申請・受給できますか?
- 原則として同一経費への重複申請は禁止されています。ただし異なる経費に異なる補助金を充てることは可能なケースがあります。商工会・認定支援機関に個別に確認してください。
関連ページ
このページで使った出典
制度の内容は 2026-08-21 に、次の公式サイトを1件ずつ開いて確認しました。金額・枠・締切は公募回ごとに変わります。申請の前に必ず最新の公募要領をご覧ください。
- 小規模事業者持続化補助金(一般型)(公募要領 第13版(第16回受付締切))
- デジタル化・AI導入補助金2026(旧 IT導入補助金)(公式サイト(2026年に名称変更))
- 中小企業省力化投資補助金(公式サイト)
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(公式サイト(23次締切の採択結果を2026年8月7日公表))
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(公式サイト(革新的新製品・サービス枠の数値))
- 創業助成事業(東京都)(東京都創業NET / 東京都報道発表(令和8年度))
- 事業再構築補助金(公募終了を確認)
- 中小企業新事業進出補助金(公募終了を確認)
当サイトは補助金・助成金の申請代行や書類作成を行っていません。
申請の可否や書類の作成は、商工会議所・商工会、認定経営革新等支援機関、各制度の事務局へご相談ください。
ご希望があれば提携先の認定支援機関をご紹介します(送客のみ・手数料なし)。
業態選び・資金計画の個別相談
記事の数値や打ち手を自店の状況に当てはめて検討したい場合は無料相談をご活用ください。
制度の内容は各公式サイトで確認したものです。公募スケジュール・補助額・要件は公募回ごとに変わります。最終確認日: 2026-08-21