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ラーメンの居抜き活用

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居抜き物件は内装・厨房機器を流用することで、ラーメン業態の初期投資を圧縮できます。当ページの内訳で試算すると、スケルトンから新装した場合の3,000万円に対して居抜きは1,785万円〜2,225万円、総額では26〜41%の圧縮です。一方で、前店舗の閉店理由や設備老朽化など事前確認が欠かせません。

残渣のついた空の寸胴
前がラーメン・つけ麺なら、茹で釜・寸胴コンロ・券売機・カウンターまで流用可。ただし残っているから使える、とは限りません。ラーメンでは給排水能力が合わないと改修費が上乗せされます。(イメージです)

ラーメン業態と居抜きの相性

居抜き物件の良し悪しは「前店舗がラーメンに近い厨房・設備構成か」でほぼ決まります。前店舗の業態別に、ラーメンとしてどこまで流用できるかを整理します。物件そのものの探し方はラーメンの物件の探し方で扱っています。

前店舗の業態ラーメンへの適合度主な活用部分
ラーメン・つけ麺茹で釜・寸胴コンロ・券売機・カウンターまで流用可
うどん・そば茹で麺機・給排水・カウンターは流用、スープ寸胴は要追加
中華・町中華高出力ガス・排気・厨房面積は流用、製麺機は別途
カフェ・物販客席は使えるが給排水・高排気・ガス容量を増設

総額では、どこまで下がるか

項目ごとの圧縮率は下の表のとおりですが、実際に効いてくるのは総額です。物件取得費と運転資金は居抜きでも変わらないため、総額の圧縮率は内装・厨房の圧縮率より小さくなります。

総額で見ると26〜41%。内装・厨房の圧縮率より小さい
スケルトンから新装 3,000万円 居抜きを活用 1,785万円〜2,225万円 0 3,000万円

内訳の上限を積み上げた3,000万円を基準に、内装を40〜60%、厨房を25〜45%圧縮した場合です。濃い赤が居抜きで残る幅、薄い赤はどの物件でも必ずかかる部分にあたります。物件取得費と運転資金は居抜きでも変わらないため、総額での圧縮は26〜41%にとどまります。前店舗の設備がラーメンの要件に合わない場合は、改修費が上乗せされてこの幅にも収まりません。

居抜き活用での圧縮効果(ラーメン)

項目スケルトンから新装居抜き活用圧縮率
物件取得費400万円400万円変わらず
内装工事費1,500万円600万円〜900万円40-60%圧縮
厨房機器700万円385万円〜525万円25-45%圧縮
運転資金400万円400万円変わらず

製麺機・茹で釜・寸胴は専用性が高く流用しにくいため厨房圧縮は控えめ。カウンター主体の内装は圧縮しやすい

内装工事費の坪単価の内訳はラーメンの内装工事費、圧縮後に必要な開業資金と調達の組み立てはラーメンの開業資金と資金調達で詳しく解説しています。

造作譲渡料は、何に対して払う金額なのか

ここまでの圧縮効果は、造作譲渡料を別に置いた話です。実際には、前の店の設備を引き継ぐために造作譲渡料を払います。この金額には決まった算定式がなく、売主と買主の相対で決まります。だからこそ、根拠を持って話せるかどうかで金額が変わります。

買い手の側が最初に押さえたいのは、相手の帳簿では、その内装がいくらになっているかです。売主は内装にかけた金額をそのまま資産として持っているわけではありません。毎年の減価償却で、帳簿上の金額は下がっていきます。5年営業した店の内装は、支払った額のままでは残っていません。

同じ内装でも、5年間償却したあとの帳簿残高は0円から1,000万円まで開く
5年で償却した場合 0万円 10年で償却した場合 750万円 15年で償却した場合 1,000万円 0 1,500万円

当ページの内装工事費の上限1,500万円を、定額法で5年間償却したあとの帳簿残高です。残存価額はゼロとして計算しています。償却年数の置き方だけで、帳簿に残る金額は0円から1,000万円まで開きます。造作譲渡料が簿価で決まるわけではありませんが、相手がどのあたりを基準に見ているかを推し量る材料にはなります。

賃借した物件の造作は、何年で償却するのか

ここで「何年で償却するのが正解か」という疑問が出ます。国税庁は、他人から借りた建物に施した造作について、その建物の耐用年数と、造作の種類・用途・使用材質などを勘案して合理的に耐用年数を見積もるとしています(国税庁 タックスアンサー No.5406、2026-08-27 確認)。つまり、法律で「飲食店の内装は◯年」と決まっているわけではありません。上の図で年数を3通り並べたのは、そのためです。ただし分岐がひとつあり、建物附属設備に対して行った造作は、その建物附属設備の耐用年数で償却するとされています。見積もりで決まるのは建物に対する造作のほうです。

例外がひとつあります。賃借期間の定めがあり、その期間を更新できず、有益費の請求も買取請求もできない契約であれば、その賃借期間を耐用年数として償却できるとされています。定期借家というだけでは足りず、更新できないこと、有益費請求も買取請求もできないことが揃って初めて当てはまります。この条件を満たす契約として処理されていた場合は、賃借期間で償却が進んでいる可能性があります。

もうひとつ知っておくと話が早いのは、同じ建物に施した造作は種類ごとではなく、すべてまとめて一つの資産として償却するという扱いです。「厨房の設備だけ新しいから高い」という説明を受けたときに、内装の造作と厨房機器は別の資産なのか、まとめて造作として計上されているのかを確認すると、相手の言っている金額の出どころが見えます。厨房機器のように独立した器具備品として計上されているものは、造作とは別に償却されます。

※ 実際の会計処理は契約内容と資産の中身で変わります。譲渡を検討する段階で税理士に確認してください。当サイトは税務の代行や個別の税務判断は行いません。

売主が造作譲渡で何を得るのかを、先に理解する

「明け渡し日が近い物件は交渉しやすい」という見方があります。これがどういう理屈なのかを売主の側から見ておくと、提示された金額が何を反映しているのかを読めるようになります。安く買うためというより、双方が納得できる線を早く見つけるための材料です。

店を閉める側には、契約に定めがあれば原状回復義務が生じます。借りたときの状態、内装が何もないスケルトンに戻して返す取り決めになっていることがあります。工事費を退去する側が負担し、預けた保証金から差し引いて精算する形も契約で定められます。範囲も負担の線引きも賃貸借契約と特約しだいなので、契約書を見るまでは確定しません。以下は、そうした条件が置かれている場合に何が変わるかの整理です。

ここで造作譲渡が成立すると、売主の立場は大きく変わります。

そのまま閉めて出ていく場合
原状回復工事
契約に定めがあれば、自分で費用を負担して実施する
保証金
工事費などを差し引いた残りが返る。敷引・償却の定めがあればさらに引かれる
内装・設備
壊して捨てる。お金にならない
造作譲渡が成立する場合
原状回復工事
貸主が造作の残置を承諾し、原状回復の範囲が変更または免除される場合は、負担が軽くなることがある
保証金
工事費の差し引きが減れば、返還額はその分だけ増える
内装・設備
造作譲渡料として代金を受け取れる

原状回復の範囲と保証金の精算は、賃貸借契約と特約で決まります。造作譲渡が成立しても原状回復義務が当然に免除されるわけではなく、貸主の承諾と範囲の取り決めが要ります。保証金には敷引・償却の定めや未払費用の充当があるため、返還額も契約次第です。どちらが有利かは、その物件の契約書を見てから判断してください。

当ページの内訳では、ラーメン店の物件取得費は100万円〜400万円です。ただしこれは保証金と礼金を合わせた額で、礼金は返ってきません。返還の対象になり得るのは保証金の部分だけで、そこからさらに原状回復費や敷引が差し引かれます。売主が同じ規模の物件に入っていたなら、原状回復をせずに済むかどうかで手元に残る額が変わります。譲渡額は、買い手が避けられる工事費、設備がどれだけ使えるか、売主の撤退にかかる費用、貸主が承諾する条件を合わせて決まります。相手の事情を材料の一つとして把握しておくと、提示された金額が妥当かを自分で判断できます。

期限が価格を動かす。ただし急いでいるのは相手だけとは限らない

売主が原状回復を避けたいのであれば、明け渡しの期限が近づくほど、造作譲渡を成立させたい理由は強くなります。買い手が現れないまま期限を迎えた場合、契約上の原状回復義務や保証金精算の定めによっては、売主の側に工事費の負担や保証金からの差し引きが生じるからです。相手にとっての締切がいつなのかを聞くこと自体が、交渉の一部になります。

聞き方は難しくありません。「いつまでに明け渡す契約になっていますか」「解約の通知はもう出されていますか」の2つで、相手に残された時間が分かります。解約の予告期間は契約ごとに違い、数か月前の通知を求める定めが置かれることがあります。予告を出した直後なのか、明け渡しまで残りわずかなのかで、同じ設備でも話の進み方は変わります。

一方で、急いでいるのが自分だけという状況も起こります。物件を押さえたい、早く開けたい、という事情がこちらにあるなら、期限を材料にする話し方は使いにくくなります。安く買うことより、引き継いだ設備がラーメンの要件を満たすかどうかのほうが、あとから効いてきます。次の節の確認項目を先に潰してから、金額の話に入るのが順番として安全です。

金額の話の前に、契約でつぶしておく4つ

造作譲渡料をいくらにするかは、そのあとの話です。先に確認しておかないと、安く買えたつもりが工事で消えます。ラーメンで特に効くのは、水とガスと排気です。

1. 給排水が湯切りの量に耐えるか

ラーメンは湯切りと茹で釜で大量の湯を流します。前の店が水をあまり使わない業態だった場合、排水の経路と勾配が足りず、改修が必要になります。カフェや物販の跡地を安く取得したものの、排水工事で圧縮分が消える、という形になり得ます。グリストラップの容量も同じで、スープと油分の排出量に対して足りているか、保健所の基準を満たすかを見ます。

2. ガスの引き込み容量が足りるか

高出力の寸胴と茹で釜を同時に回せるだけの容量が要ります。当ページの目安では都市ガスで月400〜600m³です。居抜き物件のメーター能力がこれに届かなければ、増設工事になります。工事には申請と工期がかかるため、開店予定日にも響きます。

3. 排気の能力と、その先の経路

湯気と油煙の量に対して、排気フードとダクトの能力が足りるか。もう一つ大事なのが、排気をどこへ出すかです。近隣に向いていれば、営業してからクレームになります。電気容量も併せて確認します。当ページの目安は低圧高負荷で30〜40kVA、月間2,500〜3,500kWhです。新増設の容量再申請はリードタイムに影響します。

4. 引き継ぐ設備の年式と、壊れたときの責任

製麺機・茹で釜・寸胴は専用性が高く、流用できれば効果は大きい一方、故障したときの更新費が重くなります。年式・保守履歴・湯量のスペックを確認し、その分を造作譲渡額に織り込みます。引き渡し後に故障が出たときの責任範囲は、造作譲渡契約書に書いておきます。「現状有姿」の一言で済ませると、直す費用は買い手が持つことになります。

契約と許可でつまずかないために

設備の話とは別に、手続きの面でとくに確認しておきたい点が3つあります。

貸主の承諾。造作譲渡は売主と買主の間の話ですが、物件は貸主のものです。賃貸借契約で造作の譲渡や残置が禁じられていることがあり、その場合は貸主の承諾か契約条件の変更がない限り、造作を残したまま引き継ぐことはできません。売主と金額を詰める前に、貸主が承諾しているかを確認します。

リース品かどうか。厨房機器がリース契約のものだと、売主に所有権がなく譲渡できません。引き継ぐつもりでいた機器がリース品で、契約を引き継げず買い直しになる、という食い違いが起きます。設備の一覧をもらう段階で、所有かリースかを1台ずつ確認します。

営業許可。飲食店営業の許可と、その承継の手続きは、営業する人が変わるのか、どの形で引き継ぐのか、自治体がどう運用しているかで扱いが変わります。設備をそのまま引き継げばそのまま営業できる、とは考えないでください。前の店で通っていた設備が現行の基準では通らないこともあります。物件と設備の条件が固まる前に、管轄の保健所に事前確認してください。

ラーメンの居抜きで、圧縮が消える2つの型

当ページで挙げている失敗は、上の確認項目を飛ばしたときに起きるものです。ひとつは、前の店のガス容量が低く高出力の寸胴が回らず、増設工事で圧縮分が消えた形。もうひとつは、給排水が湯切りの量に足りず排水改修が発生し、居抜きで浮いたはずの初期費用が薄れた形です。

どちらも、契約前に容量を確認していれば金額に織り込めたものです。初期投資を圧縮できても、開店後に設備の再投資が発生すれば利益率を押し下げます。圧縮効果が損益にどう効くかはラーメンの利益率と併せて確認してください。

ラーメンの居抜きでよくある質問

Q造作譲渡料は値切れますか

A相対で決まる金額なので、根拠があれば動きます。相手の帳簿に残る簿価、故障や年式の状態、明け渡し期限までの残り時間が材料になります。ただし言い値より安くすることだけを目的にすると、確認が甘くなって工事費で戻ってきます。

Q前の店がラーメン屋でなければ、居抜きの意味はありませんか

Aうどん・そばや中華なら、茹で麺機・給排水・高出力ガス・排気といった重い部分が使えます。カフェや物販の跡地は客席こそ使えますが、給排水・排気・ガス容量の増設が要るため、結果としてスケルトンに近い費用になることがあります。

Q造作譲渡料は経費にできますか

A取得した造作は資産として計上し、償却して費用にしていくのが原則です。ただし資産の中身と契約によって扱いが変わります。金額が大きいので、契約前に税理士に確認してください。当サイトは税務の代行や個別の判断は行いません。

Q営業許可は前の店のものを引き継げますか

A許可と承継の手続きは、営業する人が変わるのか、どの形で引き継ぐのか、自治体の運用がどうかで扱いが変わります。設備を引き継げばそのまま営業できる、とは考えないでください。物件を決める前に管轄の保健所に事前確認するのが確実です。

Qいつ相談を始めるべきですか

A物件を見つけてからではなく、条件を決める段階からです。前業態・ガス容量・排水・排気・貸主の承諾という条件を先に決めておくと、出てきた物件を短時間で判断でき、期限を材料にした交渉もしやすくなります。

造作譲渡の条件を詰める段階でのご相談

造作譲渡は、設備の値段を決める話に見えて、実際には相手の撤退条件との交渉です。原状回復をいつまでに終える契約なのか、保証金がいくら戻るのか、貸主が承諾しているのか。この3つが分かると、提示された金額が高いのか妥当なのかを判断できます。

当社は事業譲渡・M&Aの実務経験があり、こうした条件を整理する段階のご相談をお受けしています。ご支援できるのは、何をどの順番で確認するか、どこが判断の分かれ目になるかを一緒に整理するところまでです。物件の仲介、貸主や売主との代理交渉、契約書の作成、税務申告や個別の税務判断は行いません。これらは不動産会社・弁護士・税理士にご確認いただく前提で、検討の材料をそろえるお手伝いをします。造作譲渡の話が具体的になってきた段階で、無料相談をご利用ください。

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